マイホームの購入は一昔前であれば1人前の証で、結婚して子供ができるタイミングなどでマイホームの購入を検討することが一般的と言えました。「マイホームの購入は一生に一度の大きな買い物である」という意識を人々は持っていたはずです。
しかし、最近では「半投半住」という考え方でマイホームを購入する人々が増えています。リクルート住まいカンパニーの「新築マンション契約者調査」によると、東京都の都心6区では住宅購入が2回目である人が41%を超えているというデータがあります。さらに驚くべきことに、3回目の購入という層も2割以上います。
一昔前は「一生に一度の買い物」であった住宅が、今は複数回購入することも珍しくない時代になっているのです。複数回購入の背景には、「家はライフスタイルに合わせて住み替えを行うもの」という考えがあります。
独身、結婚、出産、子育て、など各ライフステージに合わせて家を住み替えることを考えるため、購入の際は「売却のしやすさ」や「賃貸への出しやすさ」を重視する傾向にあります。家は一生住むためのものではなく、売却や貸し出しを前提として購入することも多くなり「投資用物件」としての見方も強まっているのです。
本記事では、「投資用物件」と「居住用物件」2つの観点を持ちマイホームを選択する「半投半住」という新しい考え方について紹介します。
「半投半住」とは?
「半投半住」とは投資用と居住用の2つの観点を持ちマイホームを選択する考え方です。
居住用という観点だけでなく投資用という観点も合わせてマイホームを選ぶことで、できる限り高く売却したり、貸し出すことで、住み替えの金銭的な負担を抑えることが可能になります。
ライフステージの変化に合わせて住み替えを行う際に、住宅の資産価値が高ければ高いほど新しい家の購入資金にあてることができるということです。
住み替えを前提に住宅を購入する場合は「投資用物件としての価値」も見極める必要があるのです。
地方では空き家増加、都心ではマンションの高騰が続く
総務省のデータと野村総研の予測によると、2013年に14%であった空き家率は2017年には17%へ上昇し、2033年には30%に達するとされています。空き家率が30%になった場合、当然のことながら日本の住宅の3件に1件が空き家であるという状況になります。
空き家が増加している現状に対し、都心ではマンションの高騰が続いています。東京の駅近であれば、築年数がたっても資産価値が余り下がらないため投資用物件として注目されはじめたのです。東京一極集中の影響は住宅の価格だけでなく、購入者の思考にまで変化を起こしているということです。
「半投半住」の具体例
- 20代の独身時代に1DKのマンションを購入する
- 30代になり結婚して1DKのマンションを売却
- その資金で2DKのマンションを購入する
- 子供が生まれ4人暮らしになると3LDKのマンションへ再度引っ越し
- 2DKのマンションは賃貸へ出す
上記の例ではライフステージごとに家を住み替えており、計3回住宅を購入しています。住宅購入の際に売却のしやすさや賃貸への出しやすさに重きを置けば、上記のように住み替えを行なっても費用負担を減らしたり、利益を出したりすることも可能です。
投資に向いている物件とは?
投資に向いている物件とはどのような物件なのでしょうか。「半投半住」の考え方で重要な軸である「投資用としての物件価値」の見極め方をみていきましょう。
立地が最重要事項
将来的に資産価値が下がらない家の特徴は、何よりもまず立地が良い物件だと言えます。近年、郊外の住宅地に家を建てるのではなく「住職近接」といった会社の近くに住居を構えるという思考が強まり、都心に住宅を建てたい・持ちたい人が増加しています。
都心6区や、ターミナル駅へのアクセスが良い駅、そして最寄駅に近ければ非常に良い立地であると言えます。ただし、都心は開発されている場所が多いため、再開発以外では新しく住宅を建てることは難しいという状況です。
また、立地の良い場所は大々的には売りに出ないことも多いため、立地の良い場所に住宅を新たに建てることは難しいと言えます。そこで、中古マンションなど「中古物件」を視野に入れると選択肢が広がり、希望条件の物件が見つかる確率が上がります。
災害に強いエリア
東日本大震災以降は住宅そのものの価値だけではなく、災害に強いエリアかどうかという広い視点も重要視されています。湾岸エリアはタワーマンションが乱立していますが、3.11の際に大規模な地盤沈下が起きました。
対して、都心6区は地盤が形成された年代が古く強固であるため、地震の被害は比較的小さいと考えられています。また、高台である土地に建てられた物件は、地震で誘発される火事や津波の心配も少ない地域であると言われています。
都心6区は通勤通学などに便利な場所というだけではなく、災害への備えという点から見ても良い立地であると言えます。
半投半住がふえる理由
マイホームは「一生に一度のもの」という考え方から、「ライフスタイルに合わせて住み替えるもの」という考え方へ段々とシフトしています。独身、DINKS(共働きで子供を意識的に作らない・持たない夫婦)、子育て世帯、それぞれに適した居住環境はそのときどきで異なります。
これまでも賃貸の物件に住んで、必要なタイミングで住み替えを行うという考え方は一般的でした。では、何故住宅購入でも同様に住み替えを前提とする人々が多くなってきたのでしょうか。
バブル時代から低金利時代への移行
バブル時代は金利が高く、銀行預金などの利息が現在よりも非常に高かった時代です。また、不動産投資も純粋に「投資」が目的でであり、自身が住む家を売却することを前提として資産価値を重要視するという考えは一般的ではなかったのです。
現在、大手金融機関の金利は0.01%です。100万を預けても年に100円しか利息がつかないという悲しい状況です。銀行に預けておいても資産が増えないなら、不動産などの実物資産に変えることで資産価値を高めようと考える人が増えたということです。
そして、ただ単に不動産投資で資産運用をするだけでなく、まずは居住用として物件を取得し、後に投資用物件として運用することで、居住用の家を確保しながら最終的には資産価値を高めるという良いところどりの考え方が生まれたのです。
「バブルはいつか弾けるもの」というバブル時代の痛手を知っている世代は、「自分の資産に対する意識」がバブル世代とは異なる。「投資は無理のない範囲で行うもの」という認識を持っており、完全に投資用の不動産を購入することは考得ていない。自分の住宅に「居住」という価値だけでなく「資産」としての価値も付帯させたいと考えている。
ピークアウトがまだ先であるという予測
現在、都心部のマンションは値上がりが続いていますが、永遠に値段が上がり続けるはずはなく、いつか「ピークアウト(頂点)」を迎えます。しかし、ピークアウトの時期は2025年か2030年ごろと考えられており、現在のところは物件価格高騰が続いている状態であるため、住宅の価格・価値も高い水準をキープできるのです。
ピークアウトまでまだ数年の猶予があると考えられていることから、資産にならない賃貸へお金を払うよりも、資産となる住宅の購入を選ぶ人が増加するのは不思議でありません。
「半投半住」は住む場所で資産運用を行うこと
投資と居住の2つの観点からマイホームを選択する「半投半住」。これまでは住み替えを前提として家を選ぶ場合は「賃貸」を利用するのが一般的でした。
しかし、近年は住み替えを前提とした場合でも、住宅を購入し、投資としての側面を持たせる人が増加しています。都心で住宅の値段が上昇を続けており、購入後に住宅の値段が下がりにくいことから「住宅」を「資産」として考える人が増えたためです。
それぞれのステージに適した家をその都度購入し、利用しない家は売却または賃貸として貸し出すことで資産運用を同時に行う。「半投半住」は欲張りで、効率的で、人生の選択肢を広げる考え方なのです。