サブリース契約は賃貸物件をサブリース会社に一括借り上げしてもらい、オーナーが毎月定額の家賃を受け取れるという契約です。賃貸経営において、空室リスクは至上命題とも言えるものですが、サブリース契約を締結すると、空室リスクを負う必要がなくなります。
一見すると、理想的な仕組みにも思えますが、サブリース契約にはデメリットもあります。本記事では、サブリース契約の概要や注意点、契約前に確認しておくべきことをお伝えすると共に、かぼちゃの馬車事件におけるサブリース契約についてもご紹介します。
かぼちゃの馬車事件とサブリース契約
2018年、かぼちゃの馬車事件が社会的にも大きく取り上げられました。かぼちゃの馬車事件とは、女性向けシェアハウス事業を営むスマートデイズ社がスルガ銀行と組んで不正融資をしていた疑惑が持たれている事件です。
金融庁のストップがあったのか、スルガ銀行からかぼちゃの馬車に対して融資ができなくなったこと等を理由に、スマートデイズ社は経営破綻しています。かぼちゃの馬車事件は、このスルガ銀行の不正融資の問題がニュースに取り上げられることが多かったですが、その契約内容にも大きな問題がありました
かぼちゃの馬車におけるサブリース契約
スマートデイズ社は投資家に対して、女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を建築してもらい、入居者募集等はスマートデイズ社が行い、投資家に毎月一定額を支払うサブリース契約を締結するというビジネスモデルで運営されていました。
ちなみに、シェアハウスを建てる際の融資をスルガ銀行が引き受けていたとされており、その審査において現預金類の改ざんが行われていたとされています。
つまり、本当はローン審査に通らないはずの人が融資を受けていたということです。かぼちゃの馬車を建てたオーナーがサブリース契約を結ぶ際、そこには「30年間完全定額家賃保証」という謳い文句が書かれていたと言います。
自分でシェアハウスを運営する際に空室が出た時は家賃を得ることができませんが、サブリース契約を結ぶと空室の数に関わらず毎月定額の収入を得られ、それが30年続くと言っているのですから、こんなに魅力的な投資はないでしょう。
しかし、実際のところではオーナーは突如スマートデイズの資金がなくなってしまったことを理由に、家賃の支払いを完全停止されてしまいました。かぼちゃの馬車事件では、スルガ銀行による不正融資も絡んでいたため、世間的に大きな注目を集めましたが、実はこのようなことはどのサブリース会社でも起こり得ることです。
サブリース契約とは
ここでは、そもそもサブリース契約とはどのようなものなのかについて解説していきたいと思います。
サブリース契約の仕組み
通常、賃貸経営ではオーナーが入居者を集め、入居者から家賃を受け取ることで運用されていきます。入居者募集や管理業務を管理会社に委託したとしても、あくまでもオーナーと入居者との間で賃貸借契約が結ばれます。
一方、サブリース契約でオーナーが賃貸借契約を結ぶのはサブリース会社です。オーナーから賃貸物件を一括借り上げしたサブリース会社は、入居者の募集から入居者との賃貸借契約、建物管理等、全ての管理を行います。オーナーは管理等で何も手を煩わされることはありません。
しかも、オーナーはサブリース会社から空室の場合でも毎月一定の家賃収入を受け取ることができます。なお、サブリース会社から受け取る家賃については、大きく家賃保証型とパススルー型の2つのタイプがあります。
家賃保証型とは
家賃保証型とは、物件の空室状況に関わらず、毎月一定額の家賃収入を得られるタイプで、多くのサブリース契約はこちらのタイプです。なお、家賃保証型で受け取れる定額家賃は、物件の総家賃の70~90%の間で決められることが多いようです。
パススルー型とは
パススルー型とは、物件の空室状況に応じて受け取れる家賃が変動するというものです。つまり、空室が多くなると受け取れる家賃は減ってしまいますが、空室が減ると受け取れる家賃が増え、満室に近ければ家賃保証型のサブリース契約より多くの家賃を受け取ることができます。
サブリース契約の注意点
サブリース契約は管理を任せっぱなしで毎月定額の家賃を受け取れるという、一見すると理想的な契約ですが、慎重に進めないとトラブルに発展する可能性があります。
長期契約でも家賃の引き下げがある
まず、契約期間30年でサブリース契約を締結したとしても、期間中に家賃の減額がなされる可能性があります。建物の老朽化が進んだり、環境が変わったりして、サブリース会社が入居者から受け取れる家賃が少なくなることがあるからです。
そのようなことが原因で、サブリース会社が入居者から受け取る家賃が少なくなった場合、サブリース会社からオーナーに対して家賃の引き下げ交渉がなされるのです。
長期契約でも途中で契約解除となることがある
また、30年の長期契約でも途中で解約される可能性があります。例えば、先ほどお伝えした家賃の減額交渉について、オーナーとサブリース会社とで条件がまとまらないと、サブリース契約が解除となる可能性があります。
修繕費が高額になることがある
さらに、サブリース契約では修繕の負担について特に経年劣化分についてはオーナーの負担としているものがほとんどです。場合によっては、請求される修繕費がかなり高額となることもあるので注意が必要です。
サブリース契約する前の確認事項
サブリース契約はさまざまなトラブルに発展する可能性があることをお伝えしました。場合によっては、冒頭のカボチャの馬車事件のように、突如サブリース会社が倒産してしまうこともあります。
サブリース会社が倒産すると、その時点の入居者については契約を引き継ぐことになりますが、サブリース会社が倒産するほど運営がうまくいってない状態から改善していくのは大変なことです。こうしたことから、基本的にはサブリース契約の利用はおすすめしません。
一方、それでもサブリース契約を利用したいという方は、契約書の内容について以下の項目をしっかり確認してから契約するようにしましょう。
賃料改定の期間を確認する
サブリース会社からオーナーに支払われる賃料については、実は契約書に「2年に1度改定できるものとする」といった旨や、「協議が整わなかった場合には契約は解除される」といった旨が書かれているのが一般的です。書かれているからダメ、というわけではありませんが、そうした内容になっているということをよく理解しておきましょう。
途中解約の扱いを確認する
サブリース契約はオーナーが貸主、サブリース会社が借主となるため、法律上は基本的にサブリース会社に手厚い保護が与えられます。その1つが途中解約の取り扱いです。
オーナーはサブリース会社と一度サブリース契約を締結すると、簡単に途中解約できません。サブリース契約書では「サブリース契約を解約するには半年前に通知すること。通知のない場合、家賃〇カ月分を違約金として支払わなければならない」といった記載がなされているのが一般的です。契約する際は途中解約に関する条文をよく確認しておくようにしましょう。
修繕に関する取扱いについて確認する
入居者が退去した場合の内装費やエアコン、給湯器といった設備の修繕費は、基本的にオーナーの負担となります。この辺りは、サブリース会社によって内容が異なるところなので、どんな修繕がどちらの負担になるのか、細かい内容を打ち合わせしておきましょう。
サブリース契約は慎重に
サブリース契約について、その仕組みや注意点、確認事項についてお伝えしました。基本的には、サブリースはオーナー側のデメリットが大きく、契約自体あまりおすすめできるものではありません。
しかし、それでもどうしてもサブリース契約を利用したいという方は、本記事でご紹介した注意点や確認事項をしっかり把握しておくようにしましょう。