レオパレス事件が一時期世間を賑わせていましたが、不動産投資に取り組んでいる方や、これから始めようと思っている方は、同様の問題に巻き込まれないよう、その詳細や対策について学んでおくことが大切です。
本記事では、レオパレス事件の概要をお伝えし、サブリース問題や一棟ものを購入する際のリスクについて等ご紹介していきます。
レオパレス事件とは
レオパレス事件とは、主にレオパレスのサブリース問題や界壁がない違法建築問題について、テレビ東京の「ガイアの夜明け」がスクープして発覚した一連の流れのことを指します。
レオパレスによるサブリース問題
レオパレスによるサブリース問題とは、「アパートを建てたら相続税対策になって30年間安定的に家賃保証される」といった営業トークで、2億円~など高額な資金をかけてアパートを建てたものの、数年後には家賃の減額をされた、といったことがいくつもの建物で起こった問題です。
サブリース契約とは、通常オーナーと入居者との間で賃貸契約を結び家賃を受け取るところ、サブリース会社(この場合はレオパレス)がオーナーから括借上げし、入居者はサブリース会社(レオパレス)と賃貸借契約を結ぶというもの。
通常の賃貸経営では、オーナーは空室が出ればそれだけ家賃収入が減ってしまいますが、サブリース契約を締結すると、オーナーはサブリース会社から事前に補償された家賃を受け取れることが可能です。(ただし、毎月定額家賃を受け取るタイプと空室状況に応じて受け取れる家賃が変動するタイプがあります。)
オーナーは、家賃の1割~3割の保証料を支払う必要がありますが、空室状況に関わらず、毎月一定額の家賃収入を得られるという大きなメリットがあります。
しかし、レオパレスに限らず、サブリース契約では「30年間家賃保証」と宣伝されていたとしても、契約書には〇年ごとに家賃減額の可能性があるという記載がされていることがほとんどです。しかも、契約書には「家賃減額に応じられなければサブリース契約を解約する」といった旨が書かれていることも多く、いざ解約となると、オーナーはその時点での入居者を引き継ぐことになります。
オーナーにとっては「30年間家賃保証」のつもりでアパートを建てたのに、家賃減額どころかサブリース契約の解約の可能性もあるというわけです。
レオパレスによる界壁がない違法建築問題
レオパレスの建てたアパートは「界壁」がない違法建築物件であるとのことで問題になりました。界壁とは、天井にある各部屋の仕切りのことで、これが未設置だと隣の部屋の音が聞こえやすくなったり、火災の際に屋根を通して隣の部屋まで火の手が移ってしまいやすくなったりします。
界壁がないことは建築基準法違反であり、レオパレスでは界壁のない建物が1,000棟以上にのぼると言います。ちなみに、レオパレスではこの界壁がない問題について把握していたものの、隠蔽されていたと言われています。
レオパレスでは「ガイアの夜明け」によるスクープ後、この界壁問題について公式に認め、レオパレスの負担で2019年夏頃までに調査・補修工事を実施することを発表しています。
レオパレス21/界壁施工不備問題の概要について
一棟買いのリスク
レオパレス事件を見て、不動産投資の教訓としたいのが、「一棟買いのリスク」です。レオパレス事件のサブリース契約は、「30年間家賃保証」と言いながら、実際には数年で家賃減額請求されてしまったことが問題となっています。
しかし、そもそも物件の運営がうまく行っていたなら、サブリース会社から家賃の減額請求はされないはずです。サブリース契約でサブリース会社からオーナーに支払われる家賃は、入居者の家賃から賄われていると考えるべきで、そうでない場合は長期的に家賃を受けられると考えない方がよいでしょう。
例えば、2018年に問題となった「かぼちゃの馬車」事件では、入居者からの家賃収入だけではオーナーに支払う家賃支払いを賄うことができないため、50%にものぼる新築時の建築会社からのキックバックで賄われていたとされています。その後、スルガ銀行からの融資がストップし、新築できなくなったことが原因で運営会社のスマートデイズは倒産。
スマートデイズとサブリース契約を結んでいたオーナーへの家賃支払いは一方的にストップされました。これらはサブリース契約に関する話ですが、サブリース契約に限らず、一棟ものを購入する際には「長期的に家賃収入を得ていけるか」という判断基準を持つことをおすすめします。
一棟買いの場合は投資金額大きくなるため、その一棟で赤字が出た場合はの補填が非常に難しくなります。特に自己資金が少ない、またはほとんどない状況で一棟物件を購入してしてしまうと、その後大きな持ち出し費用が発生した場合に資金繰りがショートしてしまいます。
一棟買いはうまくいけば大きな収益につながりますが、空室が発生したり、建物自体に欠陥や違法性が見つかった場合に受けるダメージも大きくなります。
リスク分散の重要性
不動産投資では、リスク分散について考えることが大切です。特にレオパレスやかぼちゃの馬車のように建物を新築するようなケースでは、1億円~2億円を超えるなど投資額も大きく、赤字に転落した時の損失額も大きくなってしまいます。
一棟しか所有していない状態や、複数棟所有していても、その内の一棟がだめになったら経営できなくなるという状態はなるべく避けるべきです。
リスクを軽減する方法
大学の移転等で入居率が激減
サブリースに限らず、商業施設、大学の移転等で入居率が激減する可能性もあります。例えば、青山学院大学は2003年に相模原にキャンパスを移転した後、2013年には相模原キャンパスの文系学部1、2年生7,000人を東京都渋谷区のキャンパスに移転しています。
2003年当時、学生の需要を見込んで相模原に一棟もののアパートを建てたオーナーは、家賃相場の下落と入居率の減少に悩まされることになってしまいました。また、中央大学は2022年までに法学部の多摩キャンパスから後楽園キャンパスに移転する見込みです。
これらのような、大学の都心回帰現象は少子化対策の一環でもあり、今後他の大学でも同様のことが起こることが予想されます。こうした、「大学が移転したら立ち行かなくなる」ことが前提となっている投資は避けるべきです。また、仮に1棟がだめになっても運営していけるようリスク分散していくことが大切だと言えます。
エリアを分散させる
リスク分散については、所有する物件のエリアを分散させることも考えましょう。可能であれば都道府県をまたいで物件を所有できるとより効果が高いと言えます。これは、地震など自然災害リスクに対処するためです。
自然災害は被害にあう可能性がそう高くはないものの、いつ・どの地域で被害が発生するかを予測することが困難です。また、地震の場合、被害にあっても損害額の50%までしか保険金を受け取ることができない点も考慮しなくてはならないでしょう。
建築会社・管理会社の重要性
建物を建築する建築会社や、管理を依頼する管理会社選びも重要なポイントとなります。建築を依頼する会社や管理を依頼する会社を選ぶ際には、その会社の経営的な基盤を調べておくことが大切だということができます。
実際、かぼちゃの馬車事件のスマートデイズ社は2012年にできたばかりの会社で、経営基盤がしっかりしているとは言えない会社でした。もちろん、建築会社選びや管理会社選びについては他にも重要なポイントが多数ありますが、業界に詳しい知人や、知人がいなければ他の不動産会社の担当者に資金面等の状況を聞くようにするとよいでしょう。
リスク分散が重要
レオパレス事件の概要や気をつけるべき点をご紹介しつつ、一棟買いのリスクやリスク分散の重要性、建設会社・管理会社の重要性についてお伝えしました。ご紹介したレオパレス事件やかぼちゃの馬車事件、大学移転の問題等、個別に気を付けるべき点はありますが、共通しているのは長期的に運営していけるか、という点です。
不動産投資では、数十年にわたって運営していく必要があるため、今だけでなく10年後、20年後も運営していくことを前提に調査を行うとよいでしょう。