不動産投資をする上で銀行からの融資(ローン)を避けて通ることはできません。
特に、サラリーマンで不動産投資を始めようとする方は、資産家と違い自己資金が少ない傾向にあるため、不動産投資ローンは必須だと言えます。
物件価格に対して借入額の比率を大きくすればするほどレバレッジを効かせることができますが、毎月の返済金額が多くなるめリスクが高くなってしまいます。
本記事では、不動産投資の基本的な仕組みやメリット・デメリット等をお伝えするとともに、「自己資金を用意してリスクを軽減する」といった自己資金に対する考え方についてお伝えしていきます。
不動産投資ローンとは?
そもそも不動産投資ローンとはどのようなものなのでしょうか?
不動産投資ローンは投資用マンション・アパートなど、「自己居住用ではない投資用の不動産
」を購入するために借りるローンです。
対象の不動産を担保にして、その購入資金を金融機関から融資を受けるローンとなります。
住宅ローンも同様に、購入する不動産を担保に、その購入資金の融資を受けるという商品ですが、住宅ローンは「自己居住用」の住宅購入のためのローンです。
不動産投資ローンと住宅ローンとを比較してみると、一般的に以下のような違いがあります。
- 不動産投資ローンの方が審査が厳しい
- 不動産投資ローンは対象不動産が生み出す収益が重要な審査基準となる
- 不動産投資ローンの方が金利が高い
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
不動産投資ローンの方が審査が厳しい
不動産投資ローンと住宅ローンとでは、一般的に不動産投資の方が審査が厳しくなります。
不動産投資はさまざまな問題が生じる可能性が高く、継続的な返済が難しくなる可能性が住宅ローンより高いと金融機関が判断しているからです。
収益が重要な審査基準となる
住宅ローンも不動産投資ローンも審査項目としては「年収」や「勤務先」、「過去の返済履歴」、「対象物件の担保価値」などですが、重視するポイントが異なります。
住宅ローンでは、主に年収や勤務先、過去の返済履歴など借りる人の条件が重要視されますが、不動産投資ローンでは取得対象となる不動産がどのような不動産であるかがより重要視されます。
その物件が生み出す収益が見られるのはもちろん、そのエリアにおけるターゲットに合っているか、競合は多すぎないか、居室や駐車場は利用しやすいかといった点まで加味されます。
これは、不動産投資ローンの返済原資が、主に対象の不動産から得られる家賃収入だからです。
不動産投資ローンの方が金利が高い
一般的に不動産投資ローンの方が住宅ローンより高い金利設定となっています。
これは審査基準の項目でお伝えした通り、住宅ローンと比較すると不動産投資ローンは継続して返済してくれる見込みが低いことが原因です。
仮に返済が滞り、回収不可能となった時のために、高い金利を設定せざるを得ないのです。
一方で、何年も不動産投資を続け経営の安定性が盤石であると金融機関に判断されれば破格の低金利で融資してくれるケースもあります。
不動産投資ローンを組むメリット・デメリット
不動産投資において不動産投資ローンを組むメリットとデメリットをお伝えしたいと思います。
メリット1:自己資金が少なくても投資を始められる
まず挙げられることとしては、用意できる自己資金が少なくても投資を始められるという点です。
他の投資でも少ない自己資金で始められるものもありますが、不動産投資のようにレバレッジを効かせて、少ない自己資金で大きなリターンを得られる投資はそう多くありません。
ただし、後ほどご説明する通りレバレッジを効かせすぎるとリスクが高くなる点には注意が必要です。
メリット2:お金を貯める期間を短縮できる
通常は元手がないと投資ができないため、最初にお金を貯めるという期間が必要となります。
サラリーマンをしながらであれば、必要な資金を集めるために3年か4年、もしくはそれ以上の期間をかけなければいけないこともあるでしょう。
不動産投資ローンを利用して自己資金を貯める期間なく投資をはじめれば、すぐにでも収益を出すことも可能です
早く始められれば、それだけ次の投資を仕掛けるスピードを早めることも可能になります。
メリット3:家賃収入で返済できる
不動産投資の特徴的として、取得した不動産から得られる家賃収入で、ローンの返済ができるという点があります。
上手に仕組みを作ってしまえば自分は何も支払うことなく、不動産投資ローンを組むだけで家賃収入からローンを返済した後の収入を得られるのです。
さらに、ローンを完済してしまえば不動産をまるまる自分の資産とすることも可能となるというわけです。
デメリット1:空室で持ち出し費用が出ることがある
ローンを組むと毎月返済が発生します。
家賃収入で毎月の返済を行えているうちは良いですが、空室が出て家賃収入が減ると、本業の給料や貯金を切り崩すなどして返済しないといけなくなることもあります。
デメリット2:売却しても完済できないことがある
不動産は保有している内に価値が落ちていくのが一般的で、将来売却した時に売却資金でローンの残債を完済できないこともあります。
なお、不動産投資ローンでは物件を担保に抵当権を設定するため、ローンの残債を売却代金で完済できない場合には持ち出しで支払わなければならず、仮に手元の資金を使っても完済できない場合にはそもそも売却することができません。
不動産投資ローンを組む際にはこうした売却時のこと(=出口戦略)についても考えて自己資金の用意をしておくべきです。
デメリット3:最悪の場合は自己破産しなければならない
不動産投資ローンでは抵当権を設定するため、売却代金や手持ち資金で完済できなければ売却できず、その上で毎月の返済が滞るようになると任意売却や競売といった話になっていきます。
こうなると、借金を背負って生活していくか、自己破産しなければなりません。
不動産投資ローンを組む時はこのこともよく理解しておくようにしましょう。
不動産投資ローンでレバレッジを効かせる重要性
通常は投資を始めるためにある程度の元手となる資金がないと、大きくリターンを得ることは難しいとされています。
一方で不動産投資はローンでレバレッジを効かせられるため、少ない資金で大きなリターンを得ることができます。
例えば、1,000万円の元手で1億円の物件を購入し、毎年200万円(年利2%)の利益を得られるのであれば、1,000万円の元手からするとその年間利回りはなんと20%です。
他を見回してみてもこんな高利回りの投資はそうあるものではありません。
レバレッジはリスクもある
ただし、レバレッジを効かせるとそれだけリスクも増えることには注意する必要があります。
例えば、先ほどの例で1億円の物件を購入するにあたり、9,000万円を金利3%の借入期間20年で借りた場合の毎月の返済額は499,138円となります。
修繕費や固定資産税を支払っていかなければなりませんし、空室が出ると家賃収入が入ってこないため、支出だけが多くなってしまう可能性があります。
借入額が大きくなってしまうとそれだけ返済額は増え、リスクはより大きくなってしまうのです。
自己資金0は危険!
金融機関によっては自己資金0円で貸し付けてくれるケースも見られました。
ただで投資を始められ、収入を得られるようになるのですからこんなに素晴らしいことはない、と思うのも無理はありません。
しかし、先ほどお伝えしたように、ローンの借入額が大きくなればなるほどリスクは大きくなってしまいます。
先ほどの例で、物件価格1億円に加え、物件価格の1割程=1,000万円を経費として借入する場合(借入額1億1,000万円、借入期間20年、金利3%)、月々返済額は61万円にまで跳ね上がります。
もし家賃収入が途絶えてしまったら、毎月61万円の借金返済という現実がふりかかるのです。
借入金返済後利回りが重要
不動産投資ローンでは、主に以下の3つの利回りがあります。
- 表面利回り
- 実質利回り
- 借入金返済後利回り
表面利回りとは、単純に家賃収入を物件価格で割って求めるもので、広く使われていますが精度の高いものとは言えません。
次に、実質利回りとは家賃収入から固定資産税や修繕費などの費用を差し引いたものを、物件価格で割って求めるもので、表面利回りより精度の高い利回りの想定が可能となります。
また、借入金返済後利回りとは、家賃収入から各種経費を差し引き、さらに借入金返済額を指しい引いた額を物件価格で割って求めるものです。
借入金返済後利回りは3つの利回りの中で、最も厳しく利回りを算出したものだと言えます。
不動産投資ローンを組むにあたっては、この借入金返済後利回りを参考にすることをおすすめします。
キャッシュフローがとにかく大事
借入金返済後利回りを求める理由としては、不動産投資を行っていくにあたって「キャッシュフロー」がとにかく大事であることが理由です。
キャッシュフローとは現金の流れのことですが、「常に手元にある現金を多くする」ことが大切であると言い換えることもできます。
不動産投資では修繕費の支払いが突発的に発生したり、税金の支払いなど多額の出費があったりすることがあるため、現金を多く残しておかないと赤字になってしまう可能性があります。
赤字になると、せっかく取得した物件も売却しなければならないですし、最悪の場合は自己破産の可能性も出てきます。
そうならないためにも、借入金を返済した後の手残りがいくらかを把握し、キャッシュフローを少しでも改善できるよう工夫を重ねていくことが大切です。
不動産投資ローンの審査に通るには?
不動産投資ローンでは物件の収益性等が重要な旨をお伝えしましたが、借りる人の年収なども審査基準として含まれます。
不動産投資ローンの審査で承認を得るためには、どのような点に気を付けるとよいのでしょうか?
勤務先が問題の場合は転勤も視野に入れよう
不動産投資ローンの審査項目の中には「勤務先の属性」も含まれます。
公務員や一部上場企業の社員、医師など難関資格の資格保持者が継続して返済してくれやすいと見られ、融資が下りやすいです。
不動産投資ローンの審査の際、勤務先の属性で引っ掛かることが多い方は一部上場企業等への転職も視野に入れてみるとよいでしょう。
なお、中小企業の会社員の方でも、信用金庫や信用組合などから信用が高いケースもあるので、まずは信用金庫や信用組合を利用してみるのもよいでしょう。
一度融資を受けられれば、不動産運用の実績次第で勤務先に関わらず融資を受けることが可能になっていきます。
自己資金を貯めよう
審査の際には、自己資金の有無も見られます。
自己資金が多く、物件購入にあたって自己資金を支払える方が安定性が増すのはもちろんですが、「それだけの額を貯めた」という人間性を高く評価されることにもつながります。
収益性の高い物件を探そう
もっとも重要なのは収益性の高い物件を探すということです。
年収や属性、自己資金面で不安があっても、物件の収益性や将来性が高い場合には融資を受けられるケースがあります。
逆に、年収や属性がよくても物件の収益性が低いと融資を受けられません。
ご自分の年収や属性を高めるのと同時に、よい物件を探すことに手間と時間をかけることも大切です。
不動産投資ローンの借入の流れ
不動産投資ローンの一般的な借入の流れは以下の通りです。
- 物件探し
- 金融機関に融資の打診
- 売買契約
- 金融機関による本申し込み
- 融資手続き
- 融資実行~所有権移転
それぞれについて、以下で見ていきましょう。
①物件探し
まずは物件探しをします。
この段階から表面利回りだけでなく、実質利回りや返済後利回りを想定しながら物件選びをしていきましょう。
②金融機関に融資の打診
よい物件が見つかったら、ひとまず金融機関に融資の打診をしてみるとよいでしょう。
この段階で融資の確約を貰うことはできませんが、その物件で融資を受けられるかどうか、おおよその見通しを聞くことができます。
この見通しは金融機関によって、また担当者によっても異なるため、複数の金融機関に聞いてみるとよいでしょう。
③売買契約
物件を気に入っており、金融機関の反応が悪くないようであれば、売買契約を締結します。
なお、売買契約締結時には、仮に不動産投資ローン審査が否決だった時に白紙解約のできるローン特約を盛り込んでもらうとともに、その期限をよく覚えておくようにしましょう。
不動産投資ローンは、審査が難航すると1カ月程時間がかかることもあり、最初に設定した期間を超えてしまうとローン特約の適用を受けられなくなってしまいます。
(通常であれば、設定した期限を超えて審査に時間がかかりそうであれば、期間の延長を申し込むことができます)
④金融機関による本申し込み
売買契約締結後、金融機関による本申し込みが行われます。
なお、本申し込みは同じ期間に複数の金融機関に申請しても問題はありません。
ただし、双方承認が下りたケースなどでは、どちらかを断らないといけなくなるため、後々のことも考えて進めるとよいでしょう。
⑤融資手続き
本申し込みの承認が得られたら融資の手続きを進めましょう。
具体的には、金融機関の窓口で金銭消費貸借証書に必要事項を記入し、ローンの決済日を決めます。
決済日には、関係する不動産会社や売主、司法書士等が立ち会うため、日程を合わせる必要があります。
なお、このあたりの日程調整は不動産会社の担当者が行ってくれるのが一般的です。
⑥融資実行~所有権移転
事前に定めた日程で融資の実行がなされ、現金の支払いが済んだ段階で所有権移転登記を行います。
不動産投資はローンがカギ
不動産投資ローンについて、その概要や住宅ローンとの違い、自己資金についてやメリット・デメリット、審査で承認を得る方法、手続きの流れ等お伝えしました。
不動産投資におけるローンは、審査の承認を得るのが難しいだけでなく、決済後のキャッシュフローにも大きく関わる重要なものです。
自己資金が少なくともローンを活用すればレバレッジがきき、資金を貯める時間を短縮することはできますが、返済額多くなることで月々のキャッシュフロー悪化し、リスクが高くなってしまいます。
物件選定の段階から、返済後利回りまで想定して物件選びをするようにしましょう。