2018年8月31日の日経新聞の報道によって、東証一部上場企業である株式会社TATERUが顧客の通帳残高を勝手に改ざんし、不正を働いていたことが発覚しました。また、改ざんされた通帳残高によって融資が通ってしまい、不動産投資を行っていた人たちに被害が出ています。
そもそも、自分の年収や借入状況、預金残高をきちんと把握していれば防げた事件でもあるのです。
実態とはかけ離れた融資が行われたときに、違和感を持つこともできたかもしれません。
今回は、TATERU事件の経緯を明らかにすると共に、こうした被害に遭わないためのポイントについて解説します。
不動産投資は何よりも、自分で最終的な判断を行うことが大切です。
不動産投資は実際には経営的な側面が強いものであるため、自ら数字を読み取り、判断していくことが求められます。
TATERU事件を教訓として活かしていくポイントを見ていきましょう。
TATERU事件が起こった経緯
株式会社TATERU(旧・インベスターズクラウド)は東証一部上場企業であり、2017年12月時点の売上高は670億円に達していました。
「TATERU Apartment」というサービスを提供しており、アプリを介したアパート経営が中核事業となっています。
アパート経営を行いたい顧客に対してオンライン上で土地をマッチングし、アパートの建築と管理業務を担うのがTATERUなのです。
不動産投資の経験が浅い人でも、低いハードルで始められたのがTATERUのサービスだったと言えます。
不正事件の発覚
しかし、2018年8月に報道された日経新聞の記事などで、状況は一変します。
TATERUが、アパートを建設する資金の借入を希望した顧客の通帳残高を改ざんし、銀行に融資申請を行っていたことが発覚しました。
通帳残高を実際よりも多く水増ししたうえで、銀行融資の審査を通りやすくしていたとのことです。
TATERU側はこの事実を認め、顧客に対して謝罪を行っています。
報道によれば、2018年4月にTATERUから全9戸・木造3階建ての物件を約1億1000万円で、顧客が紹介を受けたことが取り上げられています。
購入資金は金融機関からの融資が受けられるので、「自己資金がなくてもアパート経営ができる」と提案を受けたようです。
顧客はTATERUの担当者に預金残高の履歴データを提出し、その金額は約23万円でした。
担当者は「問題ない」と回答し、後日融資の承認が下りることになります。
2018年6月になって、顧客が金融機関に対してTATERUの担当者が提出していた預金残高のデータを開示するように要求しました。
約23万円であった預金残高は、約623万円に改ざんされており、不正問題が明るみになります。
この他にも、物件価格や資産額のねつ造、TATERUからの頭金貸付疑惑などが報道されました。
一連の報道後に迎えた決算ではアパート成約件数が激減し、会社としての信用低下がうかがえます。
350件のねつ造
2018年12月27日に発表された第三者調査委員会の報告書によれば、通帳残高のねつ造は2269件のうち350件で行なわれていたとのことです。
経営陣への責任追及の声もあがっており、上場企業の不正問題という面から見ても、社会的な影響力が大きいと言えます。
被害を避ける対処法
TATERU事件に限らず、かぼちゃの馬車とスルガ銀行の不正融資事件など、不動産投資家が被害に遭う事件が続いています。
こうした被害を避けるためには、業者の話を鵜呑みにせずに「自分で確かめる」ことが何よりも大切です。
年収や借入状況、預金残高などを踏まえたうえで、どれくらいの融資が受けられるのかをあらかじめシミュレーションしておきましょう。
融資額のラインが自分である程度判断できれば、実態に合わない融資結果に対して疑問を抱けるはずです。
資金繰りの問題
そもそも、数十万円程度の預金残高で1億円単位の物件を購入できたとしても、税金や保険料の支払いで苦しむことになります。
同時に、金融機関への返済も毎月行わなければなりません。
そのうえ、利回りの低い物件であれば、途端に資金繰りが悪化してしまいます。
不動産投資は物件を購入して終わりではなく、物件を持ってからがスタートでもある点を忘れないようにしましょう。
身の丈に合った投資を心がける
不動産投資では、さまざまな業者と関わることになります。
不動産会社だけでなく、金融機関や管理会社など多くの担当者とやりとりを行うものです。
担当者の話をそのまま鵜呑みにしてしまっては、TATERU事件のような被害に遭うかもしれません。
まずは、自分がどれくらいの物件を手に入れられるのか、きちんとシミュレーションを行いましょう。
不動産投資の目的は、あくまで長期的に安定した収入を得ることにあるのですから、短期的に物事を判断するのはリスクが高いと言えます。
物件の購入や融資を受ける前に、自分自身の信用力を把握しておけば、いざというときに冷静に判断できるはずです。