J-REITは不動産投資信託と呼ばれており、金融商品の1つです。
不動産に関する投資を行うものではあるものの、実物の不動産への投資や一般的な投資信託とは異なる点もあります。
不動産そのものを所有するものではないため、不動産に対する知識よりも投資に関する知識のほうが求められます。
余裕資金で不動産に関する投資信託を購入するイメージだと言ってよいでしょう。
J-REITへの投資をうまく活用していくためには、市場動向や銘柄の特性について理解を深めておく必要があります。
また、メリットとデメリットについても把握しておくことが大切です。
今回は、J-REITの基本的な仕組みについて詳しく解説していきます。
J-REITの仕組み
J-REITは不動産投資法人が経営を行うものであり、投資家や金融機関から調達した資金をもとにして、さまざまな不動産に投資を行います。
物件から得られた賃料を分配金として、投資家に還元する仕組みです。
一般的に株式や債券などと比べて不動産は流動性が低く、取引価格もわかりづらい面があります。
そこで、J-REITは証券取引所に上場していつでも売買できるような仕組みをとっており、流動性をきちんと確保しているのです。
投資家は不動産投資法人が発行する投資証券を購入し、証券会社を通じて売買することができます。
市場の拡大と共に銘柄数は60を超えており、時価総額は12兆円あまりまで成長しているのです。
不動産投資との相違点
不動産に直接投資を行う場合とJ-REITでは、さまざまな部分で違いがあります。
まず、直接投資の場合はマンションやアパートなど、主に住居向けの不動産が投資対象となるのです。
しかし、J-REITでは住居向け不動産だけでなく、オフィスビル・商業施設・ホテル・倉庫など多くの種類の物件が投資対象となります。
直接投資では自ら物件を選定する必要があるものの、J-REITでは専門家が物件を選定するため、投資家自身に不動産の知識がなくても投資を行えるのです。
また、直接投資ではまとまった資金がないと物件の購入は難しいですが、J-REITでは少額からの投資が可能であり、分散投資にも向いています。
J-REITに投資をしても物件を直接所有することはできませんが、物件の管理を投資家が行う必要もありません。
そして、直接投資の場合は物件の売買は不動産市場を通じて行うことになるため、換金性は低いと言えます。
その一方でJ-REITは証券市場で売買できるため、換金することも容易なのです。
銘柄の種類と投資対象エリア
J-REITといっても銘柄の種類や投資対象となるエリアには違いが見られます。どのような違いがあるのかを解説していきます。
単一型と複合型
J-REITは不動産投資法人によって、運用する不動産に違いがあります。
ただ、大きな特徴として「単一型(単一用途特化型)」と「複数型(複数用途型)」にわけられるのです。
単一型とは、特定の用途に特化して投資を行うものを指します。銘柄によって、住居特化REITやホテル特化REITなどといった枠で括られます。
複合型は、2つ以上の用途の不動産に投資を行うものです。
分散投資を行うことによって、安定性といった面で優れていると言えます。
J-REITへの投資で収益性よりも安定性を重視する場合には、複合型の銘柄を選ぶほうが良いでしょう。
エリアの違い
銘柄の特徴は投資対象となる不動産の違いだけではなく、エリアによる違いもあります。
全国のさまざまな不動産を投資対象としているものもあれば、関西圏など特定のエリアに絞って投資を行っているものもあるのです。
投資スタンスによって、さまざまな銘柄を選ぶことができ、バリエーションに富んだ投資を行えます。
エリアによって求められる不動産需要も異なってくるので、投資家側に多くの選択肢を提供してくれているのです。
J-REITの特徴
J-REITは金融商品としてのさまざまな特徴を備えています。
どういったメリットやデメリットがあるのかを見ていきましょう。
J-REITのメリット
不動産の直接投資では、物件を取得するために数千万円必要になることもめずらしくありません。
その一方で、J-REITでは数万円といった少額からの投資が可能であるため、手軽に始められます。
J-REITは投資を行っている不動産の賃料収入が分配金に充てられるため、利回りが高いのも特徴です。
不動産投資法人という性質上、利益の90%以上を投資家に分配すれば法人税が発生しない仕組みとなっているので、高い還元率を誇ります。
直接投資では自ら物件を選定して、維持管理も行っていかなければなりません。
しかし、J-REITであれば専門家が運用をすることになるため、投資家は面倒な手続きを行わなくても投資が行えます。
直接投資の場合では複数の不動産を所有するのはハードルが高いものの、J-REITでは投資家や金融機関から調達した豊富な資金によって分散投資を行ってくれます。
そのため、投資リスクを低く抑えてくれるというメリットもあるのです。
J-REITのデメリット
金融商品としての魅力に溢れたJ-REITではあるものの、いくつかのリスクもあるので注意が必要です。
まず、J-REITは不動産市場による影響を受けるものであるため、物件から得られる賃料収入には変動もあります。
また、金利が上昇することによって金融機関からの借入利息の負担が大きくなるため、収益性が悪化してしまうリスクがあるのです。
基準価格や分配金にも影響を与える部分があります。
そして、地震や水害といった自然災害の発生によって、不動産の価値が減少したり物件そのものが消失したりといったリスクもあります。
大規模な修繕や建て替えといったことが必要になれば、収益性が悪化して分配金が減ってしまう恐れもあるので注意しておきましょう。
さらに、収益性が悪くなって資金繰りに問題が生じれば、上場廃止や不動産投資法人の倒産といったリスクもあります。
投資法人が所有する物件の価値がまったく無くなってしまうわけではないため、投資額の一部は返金される可能性はあるものの、潜在的なリスクとして意識しておくことが大切です。
銘柄の選定基準と指標
J-REITは60近くの銘柄が上場されているので、どの銘柄に投資をすべきか迷ってしまうものです。
銘柄を選ぶ際のポイントと指標について解説していきます。
収益性と安定性
銘柄によって不動産の用途が異なるため、収益性や安定性に違いがあります。
安定性を重視する場合は、景気動向に左右されづらい「住居特化型REIT」を選んでみると良いでしょう。
収益性を求めるのであれば、「オフィスビル特化型REIT」「ホテル特化型REIT」「商業施設特化型REIT」などへの投資を検討してみてください。
ただ、景気動向の影響を受けやすいため、ハイリスク・ハイリターンとなる傾向にあるので注意が必要です。
収益性と安定性のバランスを重視する場合には、複数の不動産に投資を行う「複数用途型REIT」を選んでみるのが無難です。
特定の銘柄にこだわらないのであれば、分散投資を行ってリスク管理を意識しておきましょう。
利回りだけを見るのはNG
銘柄の選定ではどうしても利回りに目を奪われてしまいがちですが、単に高ければ良いというものでもありません。
分配金が多過ぎれば、投資法人は新たな物件を購入する資金に余裕がないため、将来性に疑問が残ります。
J-REITへの投資を行う際には、「NAV倍率」と「LTV(借入金比率)」を重視してみましょう。
NAV倍率は「REITの基準価格÷1口あたりの純資産」によって算出されるものであり、基準価格が純資産の何倍であるのかを示しています。
NAV倍率が1より小さければ割安な銘柄であり、1を上回っていれば割高ということになるのです。
価格が適正であるかどうかの判断基準となるため、購入のタイミングを見定めるのに役立ちます。
LTVは「有利子負債÷純資産」で算出されるもので、財務の健全性がわかります。
LTVの数値が高ければ多くの借入金がある状態であるため、倒産のリスクが高いということなのです。
仕組みを理解したうえで投資を行おう
J-REITは少額から投資が行え、物件の管理など面倒な作業もありません。
専門家が運用してくれるので、自ら物件を選定する必要もないのです。
不動産を投資対象とした金融商品であり、証券市場を通じて自由に売買を行うことができます。
また、株式などと比べて高い利回りを出している銘柄もあり、注目されている金融商品なのです。
ただし、株式などと同じように価格変動などによって、元本割れを引き起こしてしまうリスクはあります。
また、突発的な自然災害の発生によって、収益性が大きく悪化してしまう可能性もあるものです。
J-REITの基本的な仕組みや特性をよく理解したうえで、投資を行ってみてください。リスク管理や資金管理といった部分に気を配っておきましょう。