東京都・埼玉県・神奈川県で事業を行っている西武信用金庫では、不動産業者による書類の改ざんによってTATERU事件と同様に不正融資が行われました。不動産投資向けの融資を積極的に行ってきた金融機関であるため、スルガ銀行と比較されることも多いのです。
金融庁が西武信用金庫への立ち入り検査の方針を決めたのも、業者の不正を見逃した審査体制を問題視したからだと言えます。
スルガ銀行が引き起こしたシェアハウス不正融資問題の影響から、金融機関が行っている不動産投資向け融資に厳しい目が向けられているのです。
そもそも、こうした事件に巻き込まれてしまわないためには、実態とかけ離れた融資結果に違和感を持つことが大切です。
年収や預金残高、借入状況などを踏まえたうえで、どの程度の融資を受けられるのかを把握しておきましょう。
今回は、西武信用金庫の事例を通じて、不正融資に巻き込まれてしまわないためのポイントを解説していきます。
西武信用金庫の不正問題
1969年に2つの信用金庫が合併する形で、西武信用金庫は発足しました。
2018年の預金残高は2兆円を超えており、東京都・埼玉県・神奈川県で74店舗を展開している大手信用金庫です。
不動産投資向け融資に積極的な金融機関であり、多くの不動産投資家が利用をしています。
しかし、2018年10月に不正融資を行っていた疑いが発覚したのを皮切りに、2019年4月には反社会的勢力に融資をしたことが問題となっています。
不動産業者が預金残高を改ざん
2018年10月の朝日新聞の報道によれば、都内の不動産業者が不動産投資を希望する顧客の預金残高を水増しして、西武信用金庫などから融資を受けていました。この業者はスルガ銀行からも同様の手口で融資を受けており、新聞報道を受けて業務を停止しています。
西武信用金庫側は内部調査の結果、業者から提出された資料の改ざんが行われていたことを認めています。
金融庁は西武信用金庫の審査体制にも問題があったとして、立ち入り検査の方針を決めました。
反社会的勢力に融資
2019年4月には毎日新聞・朝日新聞・日経新聞が、西武信用金庫が指定暴力団の関連企業に対して融資を行っていた疑いがあることを報じています。
ペーパーカンパニーを含んだ複数の企業に対して、数年にわたって融資が行われていたとされており、反社会的勢力の活動資金として使われていた疑いも持ち上がっているのです。
西武信用金庫の内部データベースでは、関係する企業を「反社会的勢力に該当する」としていたにもかかわらず融資を行っており、不適切な融資であることを認識していた可能性もあります。
また、事業の実態がない企業に対しても融資を行っているケースがあり、金融庁は再度立ち入り検査を行うことになったのです。
さらに、支店長などの幹部クラスが指定暴力団の関係者らに、接待を繰り返していたことも報道されています。
支払いには西武信用金庫名義のクレジットカードが利用されており、金融庁の立ち入り検査を受けて、カードの使用を自粛することになりました。
一連の問題を受けて、西武信用金庫の理事長の進退問題にまで発展する可能性があると言えるでしょう。
シミュレーションの重要性
西武信用金庫の不正融資やTATERU事件などの被害に遭ってしまわないためには、こういった事例について把握しておくと共に、融資を受ける際に自分でシミュレーションを行うことが大切です。
年収・預金残高・借入状況などを踏まえたうえで、どの程度の融資を受けられるのかを計算しておきましょう。
また、不動産投資では物件を取得した後も、物件を維持するための費用や税金がかかってきます。
物件を取得することが目的ではないため、維持管理の部分も含めて資金調達を考えておく必要があるのです。
不動産投資で安定的な収入を確保するためには、不動産会社や管理会社だけでなく、どの金融機関と付き合っていくのかという点にも意識を向けておきましょう。