不動産投資では減価償却を経費計上することで毎年の納税額を安く抑えることができますが、民泊でも減価償却を経費として計上できるのでしょうか?
本記事では民泊における減価償却について基本的な内容や注意点をお伝えしていきます。
民泊でも減価償却は可能
民泊を含めた不動産投資における減価償却とは、簡単に言うと不動産の取得費を耐用年数で割って毎年の経費として計上できるもので、例えば1,000万円で購入した不動産の耐用年数が10年であれば毎年100万円を経費として計上できることになり、高い節税効果を得ることができます。
この減価償却ですが、基本的には民泊でも適用可能です。
減価償却は2年目以降については「実際に出費のない経費」ですのでうまく活用すれば「利益は出ているのに納税額は少ない」といった状況にすることもできます。
民泊で減価償却する際の注意点
民泊でも取得した不動産について減価償却して毎年経費として計上できますが、注意しなければならない点もあります。
満額の適用は受けられない
まず、民泊で建物の一部のみ民泊に供しているような場合、届出書等に記載している利用部分の床面積の建物総床面積に占める割合で按分した額しか減価償却できません。
また、住宅新法における民泊運営では1年間のうち180日を上限とした営業となっているように、建物を365日民泊に利用しているわけではありません。
このため、民泊に利用した日数を元に按分するなど合理的な方法で実際に利用した部分、日数を計算する必要があります。
民泊による収入は雑所得扱い
次に、民泊は不動産投資のように「不動産所得」ではなく「雑所得」に該当するものとされています。
これは、民泊における宿泊料は部屋の利用料の他寝具代やクリーニング代、水道光熱費なども含まれていると考えられているからです。
雑所得扱いだと何が変わるかというと、雑所得以外の所得との「損益通算」ができなくなります。
例えば不動産所得で1年間運用した結果が-100万円だった場合、給与所得など他の所得のプラスからマイナス分を差し引くことができます。
これを損益通算と呼びますが、雑所得の場合、雑所得内での損益通算は可能でも、給与所得など他の所得との損益通算はできません。
不動産投資では、サラリーマンの方が取得した不動産の減価償却を活用して給与所得の税金から還付を受けることも可能ですが、民泊では同様のことはできないと覚えておきましょう。
民泊を不動産所得とできるケース
一方、一定の要件を満たせば民泊による所得を不動産所得に分類することもできます。
例えば、不動産賃貸業を営んでいる場合で、空室になっている一定期間だけ一時的に民泊を行っている場合は不動産所得に含めて問題ないとされています。
民泊を事業所得とできるケース
また、民泊を事業所得にできるケースもあります。
こちらは、専ら民泊で得られる所得により生計を立てているようなケースです。
事業所得に該当する場合でも、給与所得など他の所得との損益通算が可能となります。
年間の所得が20万円以下であれば確定申告しなくてよい
民泊で得た利益については雑所得として計算し、確定申告して税金を納める必要がありますが、以下の条件に当てはまる方は確定申告しなくてもよいこととされています。
- 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
つまり、サラリーマンの方で民泊以外に副業をしていない場合は、民泊の所得が20万円以下であれば確定申告しなくてよいのです。
民泊における減価償却の効果は限定的
不動産賃貸業では基本的に減価償却費の満額を毎年計上できると共に、給与所得など他の所得と損益通算できますが、民泊だと利用面積や日数で按分しないといけない上に、雑所得扱いのために他の所得との損益通算ができません。
とはいっても減価償却による節税効果は高いため、物件取得前にどの程度の効果が得られるかについては試算しておくとよいでしょう。