J-REITは、新しい不動産投資の形であり、多くの投資家から注目を集めています。
今後、資産運用の方法として、選択肢の1つにJ-REITを検討したいという人もいるでしょう。
ただ、「J-REITであれば何でもよい」というわけではありません。
J-REITといってもさまざまな銘柄があり、特徴も異なります。
しっかりと利益を得て、資産運用を行っていくためには銘柄選びには慎重になるべきです。
今回は、J-REITのなかでもおすすめの10銘柄を取り上げ、それぞれの特徴について解説していきます。
銘柄選びの基準
初心者にとっては、どの銘柄に投資すべきかを決めるのは簡単ではありません。
銘柄選びの基準はいくつかありますが、まずは「安定性」「利回り」「将来性」の3つの点についてチェックしていきましょう。
資産運用なら安定性
資産運用という観点なら、J-REITの安定性を重視すべきです。
利回りの大きさや将来性がある銘柄でも、リスクの高い投資を行っている可能性はあります。
利益が大きくなる代わりに、投資が失敗してしまうリスクが高い場合もあるのです。
単純に利益だけを追いかける投資であれば、そうした銘柄に資金を投入するのも悪くないかもしれません。
しかし、将来のための資産運用なら、無理に利益を増やそうとする銘柄よりも安定した運用を行う銘柄を選ぶほうが重要です。
分配金による利回り
J-REIT投資は、不動産投資法人の発行する投資証券を購入するものです。
投資証券を購入し、投資主となることで、不動産投資法人の利益から一定期間ごとに分配金を得ることができます。
購入した投資証券の口数に応じて、分配金が支払われるのです。
そのため、一口当たりの証券価格に対して分配金がいくら支払われるかという「利回り」は、銘柄を選ぶ重要な基準になります。
利回りの高い銘柄であれば、それだけ大きな利益を得られる可能性があるからです。
ただし、分配金の額は銘柄によって一定ではなく、不動産投資法人の利益によって変化するという点には注意をしておく必要があります。
大きな利益を狙うなら将来性重視
J-REIT投資において、分配金とは別に利益が得られるのは「譲渡益」です。
J-REITは金融証券の一種であり、証券取引所で取引が行われています。
各銘柄の価格は、取引所における需要と供給のバランスによって決定するのです。
重要の高い銘柄であれば、取引価格が上昇していく可能性があります。
そのため、J-REIT投資においては、銘柄自体の値上がりに期待して購入する方法も有効です。
将来的な値上がりが見込めるかどうかを検討するためには、投資先となる不動産投資法人の将来性に目を向ける必要があります。
指標から選ぶ方法もある
J-REITの銘柄を選ぶ方法として、特定の指標を用いて分析するというものがあります。
「NAV倍率」や「LTV(借入金比率)」などが、よく利用される分析方法です。
NAV倍率は、J-REITの純資産に対する価格の比率を表しています。
具体的な計算方法は「NAV倍率=J-REITの価格÷一口当たりの純資産」です。
NAV倍率が1以上なら割高であり、1以下なら割安だと言われます。
不動産投資法人の保有する資産は、ほとんどが不動産です。
NAV倍率が1以下なら、投資先の法人が保有する不動産の価値よりも低価格で投資が始められることになります。
LTVは借入金比率とも呼ばれ、「LTV=有利子負債÷総資産」で計算される値です。
総資産に対し、どれだけの負債(借入)があるのかを表します。
LTVが低いほど、負債の比率が小さいため、倒産などのリスクが低くなるのです。
おすすめの10銘柄
投資基準や各指標を参考にしながら、自分に合った銘柄を選ぶことが大切です。
しかし、すべてを自分で調べて、比較するというのは初心者にとってはハードルが高いものでもあります。
安定性や利回りなどの面から、おすすめできる10銘柄を紹介していきます。
大和ハウスリート
安定性が高く、利回りも4%を超える範囲で推移している銘柄です。
スポンサーが大和ハウスであり、規模も巨大なため安定性が高いと言えます。
2019年2月に公募増資を行っており、直近における増資リスクは大きくありません。
さまざまな物件を取り扱う総合REITである点も、リスク分散ができるというメリットになります。
野村不動産マスターファンド
大和ハウスリートよりも、さらに規模が大きなJ-REITの1つです。
2019年4月時点で時価総額は、全銘柄中3位を誇っています。
野村不動産がスポンサーになっている点や、総合型J-REITである点からも安定性が高い銘柄です。
時価総額上位2つは利回りが3%前後ですが、野村不動産マスターファンドは約4%を推移しており、安定性と利回りを同時に確保できます。
日本ビルファンド投資法人
全J-REITのなかで最大の規模を持つ、オフィスビル特化型の銘柄です。
三井不動産を主要スポンサーとしており、2001年に上場した最古参銘柄の1つでもあります。
資産規模1兆円を超えた最初のJ-REITであり、安定性の高さは一番です。
配当金の利回りは3%程度で推移しており、ほかの銘柄と比較してやや低いと言えます。
運営方針も分配金をすぐに増やすより、長期的に安定して利益を提供することを重視しています。
長期的な運用を考える人には、おすすめの銘柄です。
スターアジア不動産
およそ6%という高い利回りを誇る銘柄です。
2017年6月ごろには、8%を上回る利回りを記録するなど、利益を重視して投資したい人に向いている商品だと言えます。
利回りだけではなく、取引価格も順調に伸びており、将来的な譲渡益にも期待できます。
スターアジア不動産は、2020年開催の東京オリンピックの影響を受けるという期待からも注目を集めているのです。
定期的に保有物件を入れ替え、売却益を分配金に還元する積極的な経営戦略を取っており、今後も高い利回りを維持する可能性があります。
Oneリート
みずほ信託銀行をスポンサーとする銘柄であり、オフィスを中心に投資を行っています。
そのうち、80%が東京圏にある不動産に集中していることから、東京オリンピックによる価格上昇や分配金増額が期待されているのです。
すでに分配金利回りは6%前後を推移しており、J-REITのなかでも、特に高い利回りを維持している銘柄の1つです。
日本賃貸住宅投資法人
大和証券グループ本社をスポンサーとする銘柄であり、保有物件は住居型不動産に特化しています。
住宅などを中心とした運用を行うJ-REITは、収益が大きく変動する可能性は低いため、分配金も安定しています。
そのうえで、およそ4.5%の利回りを維持しているため、長期的に高利回りでの運用が期待できる銘柄です。
日本ロジスティクスファンド
三井物産をスポンサーとする銘柄であり、物流施設に特化した投資を行っています。
2005年5月という早い時期に上場しており、金融危機の最中でも物件取得に動いたことで、強固な基盤を築きました。
また、再開発を行う独自の取り組みもあり、J-REITのなかでも高い安定性があると言われています。
平和不動産リート< /h3>
東京都区部のオフィスと住居をおもな投資対象とする銘柄であり、平和不動産がスポンサーとなっています。
2016年以降、物件の入れ替えを継続的に行い、経営状況の改善を続けてきました。
その結果、着実に分配金を増やしてきた実績があります。
利回りは4%前後であり、それほど高いとは言えませんが、今後の成長に期待できる銘柄です。
いちごホテルリート
ホテルに特化したJ-REITであり、高い利回りが特徴の銘柄です。
大阪や京都など、地方の物件を多く保有しています。
スポンサーであるいちご株式会社は、既存不動産に新しい価値を加えて再生させるという経営方針を持っており、いちごホテルリートも着実に成長を続けています。
2019年4月現在、訪日外国人は増加する傾向が強く、観光客向けのホテル需要の伸びとともに収益アップが期待できる銘柄です。
ただし、東京オリンピック後の観光業の変化は未知数なため、慎重に見極める必要があるでしょう。
日本ヘルスケア
ヘルスケア施設に特化したJ-REITであり、同種の銘柄のなかではもっとも早い2014年11月に上場しています。
資産規模はJ-REITのなかでも、非常に小さいものですが、利回りは5%前後と高い水準です。
高齢社会になった日本において、今後ヘルスケア施設の需要はますます増えることが予想されています。
そのため、日本ヘルスケアの成長も期待されているのです。
投資方針を決めることが大切
利回りや価格上昇への期待、高い安定性といった異なる特徴を持つ銘柄がたくさんあるため、J-REITへの投資を始める前にしっかりと調べることが大切です。
同時に、「自分はどのような投資をしたいのか」といったビジョンを持つことも不可欠でもあります。
「安定した運用を求める」「利回りを重視する」といった、自分なりの投資方針を固めてこそ、銘柄を選び方も自ずと決まってくるからです。
慌てて購入する必要はないので、事前にきちんと考えをまとめてから投資を始めてみましょう。