J-REITは不動産投資信託とも呼ばれ、いわゆる金融商品の1つです。
不動産投資法人が発行する「投資証券」を購入することで、間接的に不動産投資に参加できます。
不動産投資の一種とされていますが、実体は証券の売買であるため、適用される税制に違いがある点に注意しておきましょう。
J-REITの利益への課税は、不動産への直接投資よりも、株式投資に近いものです。
ただ、株式投資とも異なる部分もあるため、きちんと確認しておくことが重要です。
今回は、J-REITにまつわる税金について解説していきます。
基本は株式投資と同じ
J-REITに適用される税制の仕組みは、株式投資に対するものとほぼ同じです。
J-REITにおける主な利益は、「分配金」と「譲渡益(売却益)」となります。
これらに対する課税は、株式投資における配当金と譲渡益に課されるものと同等なのです。
分配金と譲渡益に対する課税について、それぞれ見ていきましょう。
分配金への課税
国税庁の公式サイトによれば、J-REITの分配金は「上場株式等以外の配当等」に該当します。
上場株式等以外の配当等に適用される税率は20.42%であり、所得税および復興特別所得税として徴収されるのです。
譲渡益への課税
J-REITの譲渡益(売却益)は、売却額そのものではありません。
国税庁によると、譲渡益とは「総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)」によって計算されます。
そのため、譲渡価額がどれだけ大きくても、必要経費を下回っていれば譲渡益は発生しないので課税対象ではありません。
譲渡益が発生した場合は、適用される税率は22.1%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税2.1%)となります。
配当控除がない
株式投資の場合、配当所得に対して一定の方法で計算した金額の配当控除を受けることが可能です。
ところが、J-REITの分配金については、配当控除の対象外となっています。
一般的な株式投資では、「余剰金の配当等に係る配当所得」の10%が配当控除として課税金額から控除されます。
J-REITの分配金にはこの配当控除が適用されないため、税制面においては株式投資よりも、やや不利な扱いを受ける点があるのです。
確定申告と源泉徴収を選べる
J-REITの分配金や譲渡益が発生した場合、原則として確定申告をする必要があります。
ただし、J-REITを取引するために証券会社で開設した特定口座の種類によっては、確定申告が不要な場合もあるのです。
譲渡益に関しては、特定口座を開設した際に「源泉徴収なし」を選べば確定申告が必要となり、「源泉徴収あり」を選べば確定申告は不要です。
たとえば、「源泉徴収あり」を選ぶと、J-REITの売却益が発生すると同時に、所得税額が差し引かれる仕組みとなっています。
その一方で、「源泉徴収なし」を選んだ場合は、売却益が発生してもすぐに税金を差し引かれることはありません。
年度末に確定申告を行うことで、税務署から支払い通知が送付されます。
源泉徴収を選択すると、確定申告の手間が省ける一方で、税金が即座に差し引かれるデメリットがあります。
確定申告を選択すれば、売却益から税金を支払うまでに時間的猶予が生まれますが、年度末の忙しい時期に手続きをしなければなりません。
どちらもメリット・デメリットがあるため、これらの特徴を踏まえたうえで、自分に合ったものを選びましょう。
通算損失を活用する
J-REITで利益が発生しても、課税を免除・控除される場合があります。
それは、株式投資で損失が発生しているケースです。
J-REITで得た利益と株式投資で発生した損失を「損失通算」できるからです。
この方法を利用すれば、J-REITで得た利益から株式投資の損失を差し引いた額だけが課税所得になります。
もし、株式投資の損失のほうが大きければ、課税されることはありません。
損失通算するには、2つの方法があります。
1つ目は、株式投資とJ-REIT投資を同じ証券会社で行い、どちらの特定口座も「源泉徴収あり」で口座開設するものです。
この方法では、証券会社のほうで損失通算が自動的に行われます。
2つ目は、どちらの特定口座も「源泉徴収なし」にして、確定申告の段階で損失通算して申し込む方法です。
自分で税金を計算する手間はかかりますが、きちんと手続きをすれば、節税につながるメリットがあります。
納税を忘れずに
J-REITは金融商品の一種であり、利益を目的に取引を行います。
そして、利益が発生した場合はきちんと納税しなければなりません。
それは、源泉徴収でも確定申告でも変わらないのです。
納税は義務であり、税金についてもよく考えたうえで投資を行う必要があります。
税率などをしっかりと把握したうえで、賢く資産運用を行いましょう。