実物不動産に対して直接的な投資を行わないという点では、ソーシャルレンディングとJ-REITでは同じ面があります。
しかし、両者の仕組みは性質が似ているため、投資を行う際にはそれぞれの違いをよく踏まえておくことが大事なのです。
利回り・安全性・リスクなどの観点から、ソーシャルレンディングとJ-REITを比較してみましょう。
融資と投資の違い
ソーシャルレンディングはファンドに対して出資をする形態であるものの、実質的には出資した資金は借り手となる企業に貸し付けられるため、融資の形をとることになります。
その一方で、J-REITは株式と同じように投資を行うことによって、一定の持ち分を得る形態となるのです。
ソーシャルレンディングの特徴とリスク
ソーシャルレンディングで投資家が得られるのは分配金であり、出資先に対して直接的に関与することはありません。
ファンドから提供される運用レポートなどによってしか、情報を得られない面があります。
基本的には満期になれば出資した資金が返済されますが、それまでは月ごとの分配金をチェックする程度のことしか行うべきこともないのです。
価格が毎日変動するといった概念がないため、日々の値動きに煩わされなくて済むといった点はメリットでもあります。
ファンドから資金を借りている企業が行っている事業が好調であれば、特に問題なく返済が行われる仕組みとなっているのです。
ただ、事業が不調に終わってしまい貸倒れ(デフォルト)が発生してしまうリスクもあるので注意しておきましょう。
J-REITの特徴とリスク
J-REITは証券取引所に上場されており、取引価格は日々変動しています。
想定される利回りも、値動き次第で変わっていくのです。
また、J-REITは株式市場の動きにも大きく影響を受けるところがあるので、株価が急落すればJ-REITの価格も下がる可能性が高いのです。
その一方で、J-REITの価格が下がったところで安く購入して、高くなったら売るといった投資戦略も立てられます。
流動性の違い
ソーシャルレンディングは基本的に、途中解約を行えません。
そのため、ファンドが融資を行っている企業の経営が悪化したとしても、損切りを行うこともできないのです。
満期が訪れるまで投資家側で取り組めることがないため、流動性は低いと言えます。
逆に、J-REITは投資家の判断次第でいつでも売却が可能です。
不動産市場の景気悪化や価格下落によって、先行きに期待が持てないときには売却をして換金することができます。
投資を行ううえでは流動性の確保は重要な要素となるので、1つの判断基準となるのです。
税金面での違い
税法上、ソーシャルレンディングによって得られた収益は「雑所得」として区分されます。
雑所得の場合では他の収入と合算して課税されるため、所得税の最高税率は45%となるのです。
J-REITについては株式投資と同様の扱いを受けるため、売却によって得た利益に対して一律20.315%の課税となります。
証券会社に口座を開く際に「源泉徴収あり」を選択すれば、税金の計算や納税は証券会社が代行してくれるのです。
本業が忙しく、税金のことで煩わされたくないと感じる人は、J-REITのほうがメリットが大きいと言えます。
投資スタイルに合わせて選択しよう!
ソーシャルレンディングの利回りは3~11%程度であるのに対して、J-REITは3~5%が一般的です。
利回りだけ見れば、ソーシャルレンディングのほうが有利に思えるものの、単純に利回りだけで投資対象を選ぶのはリスクが伴います。
ソーシャルレンディングが融資であるのに対して、J-REITは投資である点にも意識を向けておきましょう。
流動性の有無や価格変動リスクなど、総合的に見比べたうえで自分の投資スタイルに合わせて、どちらを重視するのか判断することが大切です。