海外不動産投資も、国内不動産投資と同様、利回りについてよく理解しておくことが大切です。
海外不動産投資について、国内不動産投資の場合とプラスして考慮しなければならないのが、金利の高さと為替レートの変動です。
海外不動産投資では、国内不動産投資と比べて金利が高いのが一般的で、その分、ローン返済後の借入金利回りの数字を慎重に検討する必要があります。
また、海外不動産投資では資産価値の変動や家賃収入に加え、為替レートの変動でも成果が変わります。
本記事では、これら、海外不動産投資における利回りを考える上で知っておくべき内容についてお伝えしていきます。
海外不動産投資において利回りが重要な2つの理由
不動産投資では、国内、海外に関わらず物件取得前に利回りを見て比較検討することが大切です。
利回りを見ることで物件ごとの投資パフォーマンスを比較しやすくなると共に、物件購入後のお金の動きを計算できるようになります。
海外不動産投資においては特にローンの金利が高くなることが多く、また為替レートの変動によって為替差益や差損が発生することから、より利回りを計算しておくことが重要となります。
不動産投資において重要な3つの利回り
まずは不動産投資において重要な以下の3つの利回りについて解説したいと思います。
- 表面利回り
- 実質利回り
- 借入金返済後利回り
なお、利回りとは、投資した額の内、一定期間で何%回収できたかを表すもので、不動産投資において一定期間は1年間で計算されるのが一般的です。
具体的には以下の計算式で求められます。
年間利回り(%)=1年間の総収入金額÷投資元本×100(%)
例えば、1億円投資して、1年間で1,000万円の収入を得られる場合、年間利回りは1,000万円÷1億円×100(%)=10%となります。
それでは、不動産投資において重要な3つの利回りについて見ていきましょう。
表面利回り
表面利回りとは、不動産投資において収入のみを加味した利回りで、以下の計算式で求められます。
表面利回り= 1年間の総収入金額÷不動産購入価格×100(%)
例えば、1億円の物件を購入して月に100万円、1年間で1,200万円の家賃収入があるのであれば、1億円÷1,200万円/年×100%=約8.3%となります。
表面利回りでは、「投資した額に対して、1年間でいくらの収入が得られるか」は分かりますが、実際の不動産投資では運営していく上で必要となる経費やローンの返済があり、表面利回りではそのことが考慮されていません。
つまり、「実際に手元にどのくらいのお金が残るか」が分かりません。
ただ、実際の経費やローン返済額は取得する人によって異なり、すぐに分かるわけではありません。
このため、表面利回りはネットの物件情報など誰が見ても同じ情報だけで計算できるものとして有用で、その段階での物件比較に用いられます。
なお、「1年間の総収入金額」が現況、つまり実際の入居状況に応じた「現況家賃利回り」と、実際の入居状況に関わらず満室を想定して計算する「満室時想定利回り」があるため、どちらが利用されているかについてもよく確認しておく必要があります。
実質利回り
実質利回りとは、1年間の収入だけでなく、固定資産税や管理費、火災保険料、修繕費など経費も含めて利回りを計算するもので、以下の計算式で求められます。
実質利回り=(1年間の総収入金額-1年間の経費)÷不動産購入価格×100(%)
例えば、1億円で物件を購入し、月に100万円、1年間で1,200万円の家賃収入があり、また管理費や修繕費などの各種経費で月に20万円、1年間で240万円かかっている場合の実質利回りは、(1,200万円/年-240万円/年)÷1億円=9.6%となります。
不動産投資を運用していく中で必要となる経費について考慮した利回りとなり、より現実に即した数字となりました。
ただ、実際にはこれにローン返済額が加わることになります。
借入金返済後利回り
最後にご紹介するのが借入金返済後利回りです。
借入金返済後利回りでは、実質利回りにローン返済額を加えた利回りです。
具体的には、以下の計算式で求められます。
借入金返済後利回り=(1年間の総収入金額-1年間の経費-1年間のローン返済額)÷不動産購入価格×100(%)
例えば、借入金1億円、金利1%、借入期間30年でローンを借りると、月の返済額は約32万円、年間で約384万円となります。
その他の条件を先ほどの実質利回りのものと同じとした場合、借入金返済後利回りは(1,200万円/年-240万円/年-384万円/年)÷1億円=5.76%となります。
なお、海外不動産投資の場合、国内不動産投資と比べて金利が高く設定されるのが一般的です。
例えば、上記と同じ条件で金利が3%となった場合、毎月返済額は約42万円、年間返済額は504万円となり、その場合の借入金返済後利回りは4.56%となります。
(なお、実際には借入額は物件価格のうち50%を上限とするなど条件が設けられます)
海外不動産投資においては、より借入金返済後利回りを考慮することが重要です。
海外不動産投資は資産価値の変動と為替変動に注意
国内不動産投資では、数年間の運用で大きく資産価値が変動することは、一部の地域を除いてはあまりありませんが、海外不動産投資で新興国に投資すれば、数年間の運用で数十%資産価値が変動することも起こりえます。
さらに、数年間の運用の間、為替レートが変動している可能性もあります。
このことから、海外不動産投資では現地における資産価値の変動に、為替レートの変動率を掛け合わせて、投資の成果を求める必要があります。
具体的には、以下の計算式を用いるとよいでしょう。
海外不動産投資の成果=(資産価値の変動+運用期間中の収支)×為替レートの変動率
例えば、1ドル=100円の時に、100万ドル(1億円)の物件を取得することを考えてみましょう。
1年間の運用で、資産価値が5%上昇し、1年間で9.6万ドルの収支があり、さらに5%の為替レートの変動があった場合を想定すると、(100万ドル+5万ドル+9.6万ドル)×105%=約1億2,000万円と、1年間で20%のプラスとなることが分かります。
もちろん、反対に円高になってしまうケースもあります。
上記と同じ条件で、円高方向に5%変動したケースで計算してみると、(100万ドル+5万ドル+9.6万ドル)×95%=約1億900万円と、9%程度のプラスに留まります。
このように、海外不動産投資では現地価格の変動や家賃収入の額だけでなく、為替の変動でも投資の成果が変わることになります。
海外各国の利回り
Global Property Guideでは、アジア各国の利回りが以下のように示されています。
- インドネシア:8.6%
- フィリピン:6.1%
- カンボジア:5.3%
同データでは日本の利回りが2.7%となっているため、国内の不動産に投資するより2~3倍の投資効果が得られる可能性があることが分かります。
なお、例えばインドネシアでは非居住の外国人の不動産所有を認めていないため、その利回りの高さの恩恵を得る方法は限定的です。
その他の盗難アジアの国でも土地の購入はできない国が多く、各国の法律についてもよく考慮する必要があります。
海外不動産投資はキャピタルゲイン狙い
国内不動産投資では主にインカムゲイン、つまり家賃収入による収益狙いとなりますが、新興国など資産価値の上昇を期待できる国ではキャピタルゲイン狙いの投資ができます。
その際、為替レートの変動が投資の成果にダイレクトに影響します。
為替レートの変動については事前に予測することはできませんが、円安に動くようなら売却を目指し、円高に動くようであれば現地で長期保有するなど、変動に応じた戦略を立てておくとよいでしょう。