投資や融資の新しい形として誕生した「ソーシャルレンディング」が、大きな注目を集めつつあります。
お金を貸したい人と借りたい人をつなぎ、銀行を介さずに融資を行う仕組みによって、金融市場のニーズを満たすサービスとして広まっているのです。
ソーシャルレンディングは、事業者によって融資や投資の対象が異なります。
なかには、不動産を取り扱う事業者もあり、ソーシャルレンディングを活用することで不動産投資に参加することも可能です。
ただ、初心者にとっては「どの事業者を選ぶべきか」を判断するのは難しいところがあります。
不動産を取り扱う事業者のなかでも、特におすすめできる事業者について紹介します。
不動産に特化した事業者
ソーシャルレンディングは、さまざまな事業で活用されており、融資・投資先も多種多様です。
そのなかで、不動産の取り扱いに特化したサービスを提供する事業者もあります。
不動産投資を目的としてソーシャルレンディングに参加するなら、まずは専門の事業者から検討してみましょう。
オーナーズブック
オーナーズブックは、ロードスターキャピタル株式会社が運営を行うソーシャルレンディングサービスです。
運営会社は東京証券取引所マザーズ市場にも上場しており、信頼性の高い業者だと言えます。
不動産のプロが運営しており、全件不動産担保付き商品を扱うことから、人気を集めています。
担保付き物件への融資ですから、貸倒れリスクも小さく、損失を納めることも可能です。
カカクコム株式会社など大手企業からも資本を集めており、誕生間もないソーシャルレンディング市場のなかにあって、高い信頼性・安定性を誇る事業者です。
クラウドリアルティ
クラウドリアリティは、不動産に特化したソーシャルレンディングサービスを提供する事業者です。
特徴として、国内のみならず、海外の不動産に関する商品を取り扱っている点があります。
運用内容・運用条件などを公開しており、商品のリスクなどを把握しやすい点も評判となっています。
ソーシャルレンディングは、資金を貸し出す人だけではなく、借りる人もいるからこそ成り立つものです。
融資する側の利回りが良ければ、利子の高い貸出をしなければなりません。
さらに、運用する事業者の手数料も加わりますから、高利回りであるほど貸倒れリスクが高まります。
クラウドリアリティでは、その商品における利回りだけではなく、事業者の手数料や成果報酬の取り決めについて明示しているのです。
そのため、商品の持つメリットだけではなく、リスクも確認しやすい仕組みになっています。
ただし、2014年創立のベンチャー企業であり、実績が少ない事業者という点は押さえておきましょう。
不動産商品も取り扱う事業者
ソーシャルレンディングサービスを提供する事業者のなかには、特定の種類の商品を専門に扱う事業者だけではなく、さまざまな商品を取り扱うところもあります。
そうした事業者のなかには、不動産関連の商品を提供している事業者も少なくありません。
不動産関連のソーシャルレンディングに投資するなら、専門業者だけにこだわるより、さまざまな事業者が提供するサービスも同時にチェックしておきましょう。
maneo
日本で最初にソーシャルレンディングを始め、2019年4月現在では業界最大手の事業者になっているのがmaneo(マネオ)です。
案件の種類が豊富であり、そのなかには不動産に関連したものもあります。
出資者のなかには、大手企業・有名企業も名を連ねており、資金力の高い事業者です。
借り手企業に対して直接質問を行うことができる仕組みもあり、貸し手側が安心して融資できる点が人気となっています。
maneo自身はまだ上場されていませんが、決算書の公開を行っています。
しっかりと情報開示がされているため、信頼性も高いと言えるのです。
ただその一方で、maneoはいくつかのトラブルも起こしています。
サービス開始当初に行っていた個人向け融資において、貸倒れがあったのです。
また、事業者向け融資においても返済遅延が発生したこともあります。
しかし、ソーシャルレンディングも投資の一種であり、こうしたリスクを完全に避けることはできません。
もっとも注意すべきなのは、2019年3月に起こった訴訟です。
全国の投資家や法人が、虚偽の資金を集めたうえで目的外に流用したとして、maneoを訴えています。
2019年4月現在、判決が出ていないため、どのような実態があるのかはまだ分かりません。
これからmaneoの利用を検討するなら、裁判の結果には注目しておきましょう。
SBIソーシャルレンディング
銀行やFXなど数多くの金融関連事業を展開するSBIグループに属する事業者であり、2019年4月現在では国内のソーシャルレンディング業界では第2位の規模を誇ります。
ソーシャルレンディング業界は新興企業が多いため、資本力や基盤がしっかりと整っていないところも多い状況です。
そうしたなかでも、SBIグループに属するSBIソーシャルレンディングは、資本の安定性やコンプライアンスなどの面から見て、信頼性が高いと言える事業者です。
その代わりに利回りはあまり高くありません。
特に不動産を担保とするソーシャルレンディングでは、2.0~3.2%といった低利回りの案件が少なくないのです。
しかし、そうした案件でも投資枠上限に達しているものが多くあります。
低い利回りにもかかわらず資金が集まるのは、それだけ信頼されているからです。
ただし、SBIソーシャルレンディングの信用が高くてもリスクはあります。
実際に、2018年には返済遅延が起こりました。
その後の素早い対応が評価されたこともあり、大きな問題にはなりませんでしたが、信頼できる事業者でも絶対に安全ではないという点を忘れないことが肝心です。
クラウドバンク
クラウドバンクは、成立案件総額230億円を突破した人気業者です。
利回りは6~7%程度であり、安定かつ健全な水準になっています。
運営会社のなかに証券会社(日本クラウド証券株式会社)があり、有価証券取引所の開示もされています。
公開情報が多ければ、それだけ判断材料が増えるので、投資について検討する際に役立つものです。
2017年3月期までは赤字経営が続いていましたが、2018年3月期には黒字化を達成しました。
ただし、クラウドバンクは過去に2度の行政処分を受けているという経緯があります。
そのため、一時は3カ月の業務停止命令を受けました。
最初の行政処分は2015年で、資金管理の不備や報告書の内容に不正確な情報を記載したとして、3カ月の業務停止命令を含む処分を受けています。
その後、経営改善を試み、堅実に事業を続けていると思われていました。
ところが、2017年に、実態にそぐわない内容で出資を募るなどの問題が発覚し、業務改善命令を受けたのです。
それ以降、クラウドバンクは再び事業の改善を行い、成長を続けています。
ただし、過去に2度の行政処分を受けている以上、利用については慎重に検討しましょう。
危険な業者に注意
ソーシャルレンディングは新しい投資の形として注目を集めており、不動産関連の商品を通じて不動産投資に参加することも可能です。
しかし、新しい市場では、怪しい事業者やリスクの高い商品も少なくありません。
不動産に特化したソーシャルレンディング事業者として人気の高かった「ラッキーバンク」や、高利回りで注目を集めていた「トラストレンディング」は、行政処分により事業者としての登録が取り消されています。
顧客に対して虚偽の内容で資金を募ったり、担保の評価が不正確だったりしたためです。
ソーシャルレンディングを利用するなら、信頼できる事業者を選びましょう。
そのためにも、開示されている情報をチェックしたり、運営元や出資企業の信頼性を確認したりすることを忘れないことが大切です。