管理費や修繕積立金は、ローンの返済以外に毎月支払う必要があり、その負担が大きく感じられることも少なくありません。本記事では、管理費と修繕積立金の概要や相場、将来の値上がりについてお伝えすると共に、将来の値上がりを見越したキャッシュフローの計算例などご紹介します。
管理費と修繕積立金
マンションを購入して不動産投資をする場合、毎月のローン支払いや各種経費の他に管理費や修繕積立金(区分の場合)の費用についても見ておく必要があります。管理費と修繕積立金はどちらもマンションの維持・修繕に使われる費用で、この内管理費は廊下やエントランスなど共用部分の清掃など、日常的な管理のための費用として用意されます。
一方、修繕積立金は入居者から受け取ったお金を管理組合が積み立てておき、大規模修繕の必要性が生じた時に利用されます。なお、これらの費用は毎月支払う必要がありますが、売却することになっても返還されることはありません。(ただし、毎月の支払いについては、月初から決済日までを売主、決済日から月末までを買主の負担として日割り計算することはあります。)
管理費の用途
管理費は、主に日常的な管理に対して発生する費用に充当されるもので、具体的には以下のようなものがあります。
- 管理委託費(管理会社へ委託する際の各種手数料)
- 廊下やエントランスの電球など消耗品費
- 共用部分で使用される水道光熱費
- 共用部分にかかる火災保険など各種保険料
- エントランスや中庭などの植栽管理費
管理費の相場
マンションの管理費は、マンション全体でかかる管理費用をマンション全体の㎡数で割って計算します。国土交通省による「平成25年度マンション総合調査結果」によると、1戸あたりの管理費は10,000円超15,000円以下が27.3%、15,000円超20,000円以下が21.9%で、全体の平均は15,257円となっています。
なお、マンション1棟の月当たりの管理費の総費用平均は152.5万円となっています。マンションの規模によって大きく費用が異なるため、参考程度の数字ですが、マンション1棟にかかる費用をマンションの㎡数で割って求めたのが1戸あたりの管理費です。
そのため、一般的に総戸数の多いマンションほど管理費が安くなり、総戸数の少ないマンションは管理費が高くなる傾向にあります。
管理費は値上がりする
管理費は日常的に発生する管理に対して充当される費用であることをお伝えしましたが、加入している保険料の見直しをしたり、経常的な補修に関する費用が足りていなかったりする場合では、管理費が値上げされることもあります。区分マンションの場合は管理組合の話し合いで決め、一棟マンションの場合はオーナーが決定します。
修繕積立金の用途
修繕積立金は、定期的・計画的な大規模修繕に用いられ、具体的には以下のような用途のために支払われます。
- 外壁塗装など定期的、計画的な修繕
- 天災や地震など不測の事故によって発生する修繕
- ポストの取り換えや駐車場の増設など、敷地や共用部分の変更や処分に要する費用
積立方法の2つの違い
修繕積立金は、長期修繕計画に基づいて毎月の積立金が決定されます。マンションは年数が経つにつれて劣化していき、その分修繕に要する費用も大きくなることから、築年数を経るごとに毎月の修繕積立金の負担額が大きくなっていくのが一般的です。
一方、将来に渡って修繕に要する費用が大きくなっていくことを前提に、当初から高めの修繕積立金を設定し、築年数が経っても同額程度の修繕積立金とすることもあります。前者のように、築年数に応じて負担する修繕積立金が大きくなっていく方式を「段階増額積立方式」と呼び、一方後者のように毎年同額程度の修繕積立金とする方式を「均等積立方式」と呼びます。
段階増額積立方式では、築年数が一定期間経つと急に修繕積立金の負担額が大きくなることもあるので注意が必要です。
一方、均等積立方式では、特に築年数の浅い内は実際に必要とされる額より多くの積立金を納付する必要があり、仮に途中で売却した場合は返還もされないことから損をする可能性が高くなります。長期修繕計画はマンション新築時に計画が決められ、入居者が決まった後は入居者達による管理組合によって、変更がなされることがあります。
実際には、当初修繕積立金が少ないことからマンションを販売しやすい段階増額積立方式が選ばれることが多いです。
修繕積立金の相場
平成23年に発表された「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、修繕積立金の相場は平均値は以下のようになっています。
階数/建築延床面積 | 平均値 | |
15階 | 5,000㎡未満 | 218円/㎡・月 |
5,000〜10,000㎡ | 202円/㎡・月 | |
10,000㎡以上 | 178円/㎡・月 | |
20階以上 | 206円/㎡・月 |
※機械式駐車場がある場合は別途加算額あり
ここでは、概ねの平均値として200円/㎡・月を採用すると、1戸70㎡のマンションでは、70㎡×200円/㎡・月=14,000円(修繕積立金の額)と計算できます。
上昇を見込んで計算しよう
管理費や修繕積立金は物件の築年数が増えるほど高くなるのが一般的である旨をお伝えしました。物件取得時の利回りやキャッシュフローの計算においては、将来的な管理費や修繕積立金の上昇も見込んでおくべきだと言えます。
区分マンションのキャッシュフロー計算
ここでは、物件価格3,000万円、家賃20万の区分マンションを購入した場合のキャッシュフローについてシミュレーションしてみたいと思います。なお、確認した相場通り、管理費については15,000円/月、修繕費については14,000円/月を想定して計算します。
この物件取得に際し、借入期間30年、金利2%、借入額3,000万円のローンを組んだとすると、毎月返済額は約11万円です。家賃20万円から、ローン返済額を差し引くと9万円です。
そこから、管理費や修繕積立金以外に必要な固定資産税などの費用として家賃の1割程度、2万円が差し引かれると想定すると、手残りは7万円です。最後に、7万円から管理費15,000円、修繕積立金14,000円を差し引くと最終的な手残り額は41,000円と計算できます。
管理費や修繕積立金が上昇した場合
一方、物件購入から10年経過後、管理費が20,000円に、修繕積立金が30,000円になったとすると、手残り金はいくらになるでしょうか。家賃からローン返済額や各種経費を差し引くと7万円となるところまでは先ほどと同じです。
ここから、値上がりした管理費20,000円と修繕積立金30,000円を差し引くと最終的な手残りは2万円しかない計算になります。築年数の経過によって家賃が減少する可能性も考慮すると、場合によっては赤字に転落してしまうかもしれません。
このように、管理費や修繕積立金はその負担が大きいだけでなく、将来は負担額が大きくなる可能性もあります。特に、修繕積立金については、長期修繕計画に築年数ごとの修繕積立金の計画が掲載されているので、上昇を見越したキャッシュフローの計算をしてみるとよいでしょう。
管理費・修繕積立金は必ず上がる
不動産投資で注意すべき管理費や修繕積立金について解説しました。管理費や修繕積立金は、基本的に年数の経過によって必ず上昇するものなので、購入時点で将来の上昇を見越したキャッシュフローの計算をしておくことが大切です。
特に、修繕積立金については長期修繕計画で将来の想定額を確認できるので、しっかり確認しておきましょう。