J-REITは金融商品であり、利益を得るために購入するものです。
価格の上昇や分配金によって利益が発生する仕組みですが、得られた利益には税金が課せられます。
そして、投資によって発生した利益を納税するには、原則として「確定申告」が必要です。
しかし、J-REITへの課税を源泉徴収で済ませる方法もあります。
確定申告と源泉徴収では、納税の方法やタイミングが異なり、メリット・デメリットにも違いがあるのです。
それぞれの特徴を理解したうえで、どちらの方法を選択すべきかを見ていきましょう。
課税対象は分配金と譲渡益
J-REITの取引を通じて得られる利益は、大きく分けて2種類あります。
1つは、投資証券を発行する不動産投資法人の利益を投資主に分配する「分配金」です。
そしてもう1つは、投資証券の購入時と売却時の価格差によって生まれる「譲渡益」となります。
分配金と譲渡益は、それぞれ税率などが異なりますが、どちらも課税対象になるものです。
分配金と譲渡益のどちらか、あるいは両方で利益を得た場合、税金を納めるための手続きが求められます。
原則として確定申告が必要
給与所得者の場合、自営業者などが年末に行う確定申告の代わりに、勤務先の企業が年末調整をすることで納税の手続きが完了します。
しかし、J-REITのような投資によって得た利益に関しては、自ら確定申告を行わなければなりません。
ただ、J-REITの取引のために解説する「特定口座」の種類によっては、確定申告が不要な場合もあります。
これは口座開設時に選択するものなので、口座を開設する前に理解しておきましょう。
特定口座の種類
J-REITの取引を始めるためには、証券会社で特定口座を開設しなければなりません。
特定口座には、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2つの種類があります。
2つの違いは、譲渡益に対する課税のタイミングや手続きの有無などです。
それぞれの違いについて見ていきましょう。
源泉徴収あり
源泉徴収ありの特定口座を利用する場合、J-REITの取引で譲渡益が発生しても確定申告を行う必要はありません。
確定申告をする代わりに、証券会社が手続きを行います。
実際に税金を支払うタイミングは、譲渡益の発生時です。
投資証券の取引によって、譲渡益が発生すると、即座に税金が差し引かれます。
確定申告は不要ですが、利益に対してすぐに課税されるというデメリットもあります。
源泉徴収なし
源泉徴収なしの特定口座では、譲渡益からすぐに税金が差し引かれることはありません。
年度末になると、税務署から支払い通知を受け取ることになります。
そのため、自分で確定申告を行わなければなりません。
確定申告の際には、特定口座を開設した証券会社から発行される年間取引報告書も提出する必要があります。
分配金への課税
株式投資では、投資先の企業の経営状況などに応じて配当金が支払われることがあります。
一方、J-REITでは不動産投資法人に利益があれば、分配金が割り当てられる仕組みです。
分配金への課税の仕組みは、分配金のものとほぼ同じです。
分配金の扱いについては、「申告分離課税」と「総合課税」のどちらか一方を選択することになります。
申告分離課税を選んだ場合、分配金への課税について確定申告をする必要はありません。
J-REITの分配金は確定申告不要制度の対象となっているため、分配金を受け取る段階で源泉徴収が行われるためです。
総合課税を選択した場合は、年度末に確定申告の源泉徴収による税金を精算することになります。
ただし、J-REITの分配金は確定申告を行っても、株式投資の配当金における「配当控除」を受けられない点に注意しておきましょう。
課税の仕組みを理解しよう
J-REITの分配金や譲渡益には、それぞれ異なる仕組みで課税が行われます。
給与所得以外の所得については、原則として確定申告が必要になるのです。
ただ、特定口座の種類や課税所得の分類を選択することで、源泉徴収による納税で済ます方法もあります。
しかし、確定申告と源泉徴収では課税のタイミングが異なるなど、手続きの有無以外にも特徴に違いがあるのです。
どちらの方法が自分に合っているかを検討したうえで、納税方法を選択することが重要なのです。